今までの俳句
令和7年度

季節によせて Vol.694   令和7年5月10日 
放水に脈打つホース夏きざす     晶 

  近年は桜が散るとすぐに汗ばむような陽気になる。「夏兆す」は「初夏(しょか)」の傍題。「初夏」を「はつなつ」と読み「初夏や・初夏の」と上五で用いることが多い。一方同じ傍題でも「夏兆す、夏初め」は5音なので下五に用いられることが多い。「はつなつの大きな雲の翼かな:高田正子」「江戸絵図の堀の藍色夏はじめ:木内彰志」「松脂の香れる廊下夏兆す:西山ゆりこ」立夏を過ぎた新暦5月、新緑が美しい季節である。


季節によせて Vol.693   令和7年5月3日 
教会の二階は住まひ花ミモザ     晶 

 オーストラリア原産の常緑高木のミモザ。銀葉アカシアという名でも呼ばれるのはで葉っぱが銀色に見えることから。黄色い集合花が多数集まり花房をつけて良い香りがする。我が家でも植えていたが根が浅かったのか台風の時風で倒れてしまった。南フランスでは栽培が盛んと聞くがやはりその花の色から明るく日差したっぷりの中で咲く花のイメージが強い花であっる。

・揺れてまた空へ広がり花ミモザ(今橋真理子)

・抱へきれざる明るさに花ミモザ日下野由季)


季節によせて Vol.692   令和7年4月26日 
雲雀野や一本道にバスを待ち     晶 

 雲雀は麦畑や草むらなど開けた場所の地上に巣をつくる。囀っているかと思うと一転、急降下して草むらに消える。降りたあたりを探して巣はなく賢い雲雀は巣とは少し離れたところに降りるのだそうだ。

一日に何本かしか来ないバスだけれど、雲雀がのどかに鳴く野原でその様子を見ている時間もそう悪くはない。

・雨の日は雨の雲雀のあがるなり(安住敦)

・わが背丈以上は空や初雲雀(中村草田男)


季節によせて Vol.691   令和7年4月19日 
根分したるものを持ち寄りカーポート     晶 

 根分とは植物の根を分けて移し植えること。菊や萩などは「菊根分け・萩根分け」と季語にあるぐらい。私と友人はそれぞれの庭で増えた都忘れや桜草、オダマキ、クリスマスローズ等々を持ち寄って育て方などの情報付きで交換し合う。喋っている時間の方が多いのだがそれがまた楽しい。○○さんちから来た植物がお互いの庭でまた株を大きくしている。


季節によせて Vol.690   令和7年4月12日 
摘草や子につき土手を駆け下りて     晶 

 摘草の出典は万葉集の雄略天皇の長歌や古今集の光孝天皇の「きみがため春の野に出でてわかなつむわが衣手に雪は降りつつ」の御製を見ることができる。今でも、蓬や芹、嫁菜、土筆など食べられる食材を摘んだり蒲公英や菫など可憐な花を摘む春の楽しい遊びの一つである。まだまだ難無く駆け下りられると思っていた土手だがまてまて、ここで足をくじいてはと躊躇うようになってきた。お尻を着いてずるずる滑り降りるのである。


季節によせて Vol.689   令和7年4月5日 
あれこれと夢見てばかりしやぼん玉     晶 

 催事場などで人が入れるほど大きなしゃぼん玉に興じている様子を見かけることがあるが、やはり昔ながらのストローの先から生まれるしゃぼん玉がそれらしく思える。延宝5年(1677年)ころ、初めて江戸でしゃぼん玉やが行商して流行したと言われる。芭蕉が江戸に出て(1672年)素堂らと「江戸三吟集」を刊行した頃。庶民の暮らしの中に俳諧が広まっていったころ。芭蕉さんもしゃぼん玉を目にされていたことだろう。




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